ブレーキパッド・ローター・ドラム・キャリパーの見積の行と保安基準の対応

見積書のブレーキパッド、シュー、ローター、ドラム、キャリパー、ホイールシリンダー、ブレーキホースの行が、車検の合否の基準(保安基準第12条・細目告示第93条)と、定期点検の基準のどちらにあたるかを条文で確認しました。

合否の基準にある文言: 細目告示第93条

保安基準第12条第1項は、自動車に2系統以上の制動装置(ブレーキ)を備え、制動性能が告示の基準に適合することを求めています。細目告示第93条(制動装置)には、部品の状態に触れた次の文言があります。

見積書の行条文の文言(細目告示第93条)読み方
ブレーキホース・ブレーキパイプの交換第2号ホ: ブレーキ・ホース又はブレーキ・パイプに損傷があるものは適合しない。同ヘ: ブレーキ・ホースが著しくねじれて取り付けられているものは適合しない損傷が基準に関わる。ひび割れやふくらみなど、どの状態を見て交換と提案しているかを聞く
ブレーキ液漏れの修理(配管・接手部)第2号ロ: ブレーキ系統の配管又は接手部から、液漏れ又は空気漏れがあるものは適合しない条文が名前を挙げているのは「配管又は接手部」。キャリパーやホイールシリンダー本体という部品名は、この号には書かれていない
ブレーキペダル・パーキングブレーキの調整第2号ト・チ・リ: ペダルに遊びがないもの、床面とのすきまがないもの、レバーに遊びや引き代がないもの、ラチェットが確実に作動しないものは適合しない「遊びがない」状態が基準に関わる。調整の行はこの号にあたるかを聞く材料になる
ブレーキフルード交換第8号: 制動液は、配管を腐食し、熱の影響で気泡を生ずるなどして制動装置の機能を損なわないものであること交換の時期や年数は条文にない。点検の項目との違いはブレーキフルード・エンジンオイルのページにある
ブレーキパッド・ブレーキシュー・ローター・ドラムの交換「摩耗」「パッド」「ライニング」という語は、第93条の本文に確認できなかった残りの厚さ(mm)で合否を決める数値は、この告示に書かれていない。制動の効きは、検査での制動力の測定で見られる

上の表は一部の号の文言に限ったものです。ほかの号(独立した2系統、繰り返し制動後の効きなど)は条文の本文を確認してください。

点検の基準にある文言: 自動車点検基準別表第6

パッド・シュー・ローター・ドラムの摩耗は、合否の基準でなく、定期点検の基準(自動車点検基準の別表第6、自家用乗用車等)に項目があります。一覧は定期点検の項目一覧で確認できます。

見積書の行点検基準の項目点検の時期
パッド・シューの交換ディスクとパッドのすき間・パッドの摩耗、ドラムとライニングのすき間・シューの摩耗1年ごと
ローター・ドラムの交換ディスクの摩耗及び損傷、ドラムの摩耗及び損傷2年ごと
キャリパー・ホイールシリンダーの修理・オーバーホールディスク・キャリパ、ホイール・シリンダの液漏れ(1年ごと)、機能・摩耗及び損傷(2年ごと)1年ごと・2年ごと
ブレーキホース・パイプの交換漏れ、損傷及び取付状態1年ごと

この表の「項目」は点検の内容です。見積書の「交換」は、点検で見つかった状態への整備の作業で、点検基準にも「この厚さで交換」という数値は書かれていません。摩耗の程度に関する一般的な目安は、法令の基準とは別のものとして整備項目の参考情報に分けて載せています。

電動パーキングブレーキ車の見積で出る行(点検・パッド交換時の専用作業・診断機の使用)

電動パーキングブレーキの車は、リヤのパッドを交換するときに、診断機(スキャンツール)で専用の操作をする手順が使われることがあります。診断機の作業ガイドを公開している Astemo の資料では、操作の呼び名がメーカーごとに違います(ホンダ車は「電動パーキングブレーキメンテナンスモード」、トヨタ車は「電動PKBフルリリース」、日産車は「パーキングブレーキ全解除」「初期位置調整」、スバル車は作業サポートの整備モード)。同じ資料に、自動車メーカー発行の整備解説書を代替するものではなく、車種により使えない機能もあると書かれています。呼び名は車種で変わるため、見積書の行名が下の表と違っても不自然ではありません。

見積書の行の呼び名(例)点検基準の項目にあたるか位置づけ依頼先に聞くこと
パーキングブレーキの点検・調整定期点検の項目に「駐車ブレーキの引きしろ、効き具合」がある(別表第6、定期点検の項目一覧)点検の行。電動式の車でこの項目をどう点検するかは、条文の文言からは分からない点検の料金に含まれる行か、別に立った行か
リヤブレーキパッド交換(電動パーキングブレーキ車)パッドの摩耗は項目にある(1年ごと)。交換は点検基準に書かれていない整備の行。法定の合否基準ではなく、残りの厚さのmm基準も条文にない点検で見つかった状態への提案か、年数や距離の目安か
電動パーキングブレーキの整備モード・全解除・初期位置調整などの作業料点検基準にこの呼び名の項目は確認できなかったパッド交換に伴う作業が別の行として立つ場合の行。依頼先が設定する整備の費用で、法定費用ではないパッド交換の工賃に含まれるか別の行か。ほかの行と作業が重なっていないか
診断機使用料・スキャンツール診断点検基準にこの呼び名の項目は確認できなかった依頼先が設定する費用。何のために診断機を使うかで意味が変わるどの作業のための診断機の使用か。同じ作業で複数の行が立っていないか

ハイブリッド車・電気自動車の見積で出る行はハイブリッド車・電気自動車の車検見積の読み方にあります。ここでは、電動パーキングブレーキ車の整備が必要かどうか、専用作業の金額が妥当かどうかは判定しません。出典(確認日 2026-10-14): Astemo ホンダ、トヨタ、日産、スバルの診断機の操作ガイド。

よくある質問

Q. ブレーキパッドの残り何mmで交換、という法定の基準はありますか。

保安基準の細目を定める告示第93条(制動装置)の本文に、「摩耗」「パッド」「ライニング」という語は確認できず、残りの厚さ(mm)で合否を決める数値は書かれていません。制動の効きは、検査での制動力の測定で見られます。業者が示す残量の目安は、法定の合否基準ではない参考情報です。

Q. パッドやローターの摩耗は、法令のどこに出てきますか。

合否の基準ではなく、定期点検の基準(自動車点検基準の別表第6、自家用乗用車等)に項目があります。パッド・シューの摩耗は1年ごと、ローター・ドラムの摩耗及び損傷は2年ごとの点検項目です。点検基準にも「この厚さで交換」という数値は書かれていません。

Q. ブレーキ部品の見積の行は、どう聞けば確認しやすいですか。

行の部品名を確かめたうえで、「損傷」「液漏れ」「遊びがない」のような条文にある状態を根拠にした提案か、「摩耗」の点検結果にもとづく提案かを工場に聞きます。摩耗の提案なら、測った残りの厚さや、写真・実物で見せてもらえるかを聞きます。個別の車で交換が必要かどうかは、このサイトでは判定しません。

見積書で聞くときの順番と、このページでできないこと

  1. 行の部品名が、パッド・シュー・ローター・ドラム・キャリパー・シリンダー・ホース・フルードのどれかを確認する。
  2. 上の表のうち、「損傷」「液漏れ」「遊びがない」のような条文にある状態を根拠にした提案か、「摩耗」の点検結果にもとづく提案かを、工場に聞く。
  3. 摩耗の提案なら、測った残りの厚さや、写真・実物で見せてもらえるかを聞く。使用年数や走行距離だけの提案は、メーカーや工場の目安として扱う。

ここで示しているのは、見積書の行と条文の文言の対応です。個別の車でブレーキ部品の交換が必要かどうか、提案の金額が妥当かどうかは判定しません。古い車の見積に出る行は古い車・走行距離の多い車の見積に出る整備項目、行の種類の全体は行の種類別ページ案内、部品代の費目は部品、油脂代の行にあります。

出典(取得・確認日 2026-10-12): e-Gov法令検索「道路運送車両の保安基準」第12条、国土交通省道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第93条(制動装置)、e-Gov法令検索「自動車点検基準」別表第6。

このサイトは、車検の見積に関する一般的な情報を提供するものであり、個別の車の点検整備の要否を判定・保証するものではありません。実際の扱いは整備工場と国土交通省の案内でご確認ください。